メラトニン代謝産物であるAMKによる長期記憶形成促進作用と機序


以上、本論文は、魚類におけるメラトニンの日周リズム、合成・代謝機構、受容体による情報伝達機構ならびに投与方法などについて総合的に明らかにしたもので、学術上、応用上寄与するところが大きい。よって審査委員一同は、本論文が博士(農学)の学位論文として価値あるものと認めた。


メラトニンとは睡眠調節を司る体内時計(生体リズム)を担う脳内ホルモンの ..

メラトニンの生理作用の解明にはメラトニンの投与が必須である。これまで魚類に対してメラトニン投与は数多く行われてきたが、投与後のメラトニンの動態については全く知見がない。そこで腹腔内注射と経口投与(いずれも 1mg/体重1kg)によりメラトニンをキンギョに投与し、血中メラトニン濃度の経時変化を調べところ、いずれの方法でも血中メラトニン濃度の日周リズムを再現できることが判明した。

キンギョ脳内メラトニン受容体の結合部位数は明期に多く暗期に少ない日周リズムを示した。松果体除去あるいは恒明条件下での飼育によって血中メラトニン濃度の日周リズムを消失させると、受容体数の日周リズムも消失したことから、受容体数の日周リズムは血中メラトニン濃度の日周リズムによって駆動されていると結論された。

研究成果の概要(和文):マウスをモデル動物としてメラトニンの生理学的な役割を明らかにするために、メラトニン

私たち日本人は古来より季節の変化を敏感に感じとり,四季を生活に取り入れ,その変化を楽しんできた.春,夏,秋,冬とはっきりした四季が繰り返される地域では,季節に応じて旬の山菜や魚介類を取り入れた料理を楽しんだり,お花見や花火大会といったように季節に密着した行事がある.また,桜,梅,鶯といえば春,稲刈りや松茸,秋刀魚といえば秋といったように,日本語には季語が存在する.このように,われわれ日本人は季節の変化を愛でる国民であるが,多くの動物にとって季節の環境変化は,生命の危機を及ぼしうる重大な変化といえる.動物は繁殖,渡り,冬眠,換羽など,その環境変化にあった行動や生理機能を調節することで適応している.人間は,カレンダーや新聞を見ることで現在の暦を把握することができるが,それらをもたない動物はどのように季節の変化を感知し,これから起きる変化を予測しているのだろうか?

各種ヌクレオチド類はキンギョ脳内メラトニン受容体の特異的結合を用量依存的に減少させた。その効果はGTPS>GTP>GDP>GMP=ATP>cGMPの順であった。また各種無機塩類の影響について調べたところ、MgCl2(5mM)は特異的結合を増加させたが、高濃度の各種無機塩類は特異的結合を減少させた。その効果はCaCl2>LiCl>MgCl2>NaCl>Choline chloride=KClの順であった。これらの結果から、キンギョの脳内メラトニン受容体はG蛋白質と共役していることが示された。

本試験における無毒性量は、母動物に対しては 75 mg/kg/day、胚・胎

季節によって変動する環境因子には,日長,気温,降水量などが挙げられるが,多くの動物は「日長」を指標として季節の変化を感知し,その変化に適応しており,この性質は光周性(photoperiodism)と呼ばれている(.気温や降水量は猛暑,冷夏,暖冬,空梅雨など,年によってばらつきがある情報である.一方,春分,夏至,秋分,冬至は毎年同じ時期に訪れ,ばらつきの少ない情報であるため,多くの動物が日長を季節の指標としているのは合理的である.しかし,動物がいかにして日長の変化を感知しているか,その分子メカニズムは長い間謎に包まれたままであった.

メラトニン受容体の分布と性状を2-[125I]iodomelatoninをリガンドとしたラジオレセプターアッセイにより調べたところ、特異的結合は脳と網膜で高く、その結合は迅速、安定、可逆的、飽和可能であることが判明した。脳内分布を調べたところ、密度は視蓋-視床>視床下部>終脳>小脳>延髄の順に高かった。この結果、メラトニン受容体は脳内の様々な神経核や網膜に存在すること、受容体の脳内分布は哺乳類とは大きく異なることが示唆された。特に視蓋に高濃度に受容体が分布することから、視覚情報の統合にメラトニンが重要な役割を果たしていることが推察された。

[PDF] メラトニン 2.6.4 薬物動態試験の概要文 -1

キンギョを恒暗条件下におくと血中メラトニン濃度および眼球内メラトニン含量は概日周期を示した。また培養松果体も、恒暗条件下で概日周期を示した。これらの結果から、キンギョのメラトニンリズムは環境要因のみならず内因性の生物時計による制御も受けていることが明らかになった。

ある生命現象のしくみを解き明かすには,多様な生き物の中からその研究に最適な種を選ぶことが近道である.モデル動物の代表ともいえるマウスやショウジョウバエは生物学の発展に多大な貢献してきたが,季節の変化に対して明瞭に反応しないとされてきた.一方,鳥類は高度に洗練された光周性を示すことが知られている.多くの鳥類は空を飛ぶため,非繁殖期には不要な精巣や卵巣などの生殖腺を性成熟前の未分化な状態まで退縮させ,軽量化している.一方,繁殖期には子孫を残すため繁殖状態に移行する必要がある.鳥類は繁殖期を迎えると,たった数週間で生殖腺を急速に発達させ繁殖活動に備える.この変化は,人工環境下でも日長を制御することで再現することができ,鳥類は光周性研究の優れたモデルになりうると考えられてきた(.鳥類のなかでもニワトリは昔から研究に用いられてきたが,原産地が季節の明瞭でない熱帯地域であることから明瞭な光周性を示さない.一方,ウズラは温帯である日本から朝鮮半島,中国にかけて生息する渡り鳥であるため,明瞭な光周性を示す.1960~90年代にはウズラを用いて生理学的な実験が行われ,視床下部内側基底部(mediobasal hypothalamus; MBH)の破壊実験により光周性が失われること(,長日刺激によって,細胞の活性化マーカーであるc-FosがMBHで強く発現すること(,MBHの電気刺激により性腺刺激ホルモンの分泌が促進される(ことが示されていたため,MBHが光周性の制御中枢であることが示唆されていた.


の成績に対してメラトニンは明期では促進的、夜間には抑制的な影響を与えて

キンギョについてさらに詳しくメラトニンの日周リズムを調べたところ、血中メラトニン濃度、松果体および眼球内メラトニン含量も同様な日周リズムを示すこと、血中濃度の日周リズムは松果体に依存していること、松果体と眼球におけるメラトニン合成は互いに独立しており松果体では眼球よりも低照度の光で抑制されることが判明した。

メラトニン(Melatonin)分析 ヒト/ウシ/その他実験動物等・測定対象

松果体(しょうかたい)から分泌されるホルモン。魚類や両生類に始まり、鳥類、齧歯(げっし)類、ヒトを含めた霊長類に至るまで多くの動物で産生され、繁殖や渡り鳥の飛来などの季節性リズムや、日々の睡眠や体温、ホルモン分泌などの概日リズム(サーカディアンリズム)の調節に関わっている。

以前は、動物から抽出したものものが多かったようですが、最近は植物から ..

メラトニン(N-acetyl-5-methoxytryptamine)は脊椎動物の松果体や眼球で暗期に合成されることから、環境の明暗情報を伝達するホルモンと考えられている。メラトニンは、哺乳類においては繁殖期の決定や概日周期の同調に重要な役割を果たしているが、魚類における知見は乏しい。そこで本研究は、魚類におけるメラトニンの動態、合成・代謝機構、さらにメラトニン受容体による情報伝達系までを総合的に明らかにすることを目的としている。概要は以下の通りである。

メラトニンは体内のメラトニン受容体という部位に対して働きます。

ウズラにおいて生殖腺の発達には必ずしも連続した明期は必要ではなく,短日条件下でも光感受相あるいは光誘導相と呼ばれる特定の位相(時間帯)に光が当たることで,ウズラは長日と認識し,生殖腺を発達させることができることが知られていた(.また,この光感受相は24時間周期で現れることから,約24時間の内因性のリズム(概日リズム)を刻む体内時計,「概日時計」の関与が示唆されていた.そこで,光感受相に光を照射したウズラと,照射していないウズラから採取したMBHを用いて,ゲノム情報の有無に関係なく研究を展開できるディファレンシャル解析が行われ,光周性を制御する鍵遺伝子が探索された.その結果,MBHの第3脳室周囲に位置する脳室上衣細胞において発現する(2型脱ヨウ素酵素)遺伝子が光照射により発現上昇するとともに,(3型脱ヨウ素酵素)遺伝子が発現減少することが明らかとなった(.遺伝子は甲状腺ホルモン活性化酵素をコードしており,甲状腺から分泌される低活性型の甲状腺ホルモンのチロキシン(thyroxine: T4)を,活性型ホルモンのトリヨードチロニン(triiodothyronine: T3)に変換する酵素である.一方,遺伝子は甲状腺ホルモン不活性化酵素をコードしており,T4, T3をそれぞれ不活性型のリバースT3, T2へと変換する.つまり長日条件下では,MBHでT3が局所的に合成されるのである.脊椎動物の生殖腺は,視床下部-下垂体-生殖腺(hypothalamus–pituitary–gonadal axis; HPG)軸によって制御されており,視床下部から分泌される性腺刺激ホルモン放出ホルモン(gonadotropin-releasing hormone; GnRH)によって,下垂体前葉から黄体形成ホルモン(luteinizing hormone; LH)と卵胞刺激ホルモン(follicle-stimulating hormone; FSH)が分泌され,生殖腺に作用することで発達する.MBHの最下部で下垂体と接している正中隆起(median eminence; ME)には,GnRHニューロンの神経終末が投射している.また,MEに位置するグリア細胞には甲状腺ホルモン受容体の発現が確認された(.甲状腺ホルモンは脳の発達や可塑性に関与することが知られているため,MBHで局所的に産生されたT3が,GnRHニューロンの形態変化を促すことでGnRHの分泌を制御している可能性が考えられた.電子顕微鏡でMEの超微細構造を検討した結果,短日条件ではGnRHニューロンの神経終末はグリア細胞によって包まれていたのに対し,長日条件ではグリア細胞の包み込みが減少し,GnRHニューロンの神経終末が下垂体門脈と隣接する基底膜に直接接していた(.また,短日条件で飼育したウズラの脳内にT3を投与したところ,これらの脳の形態変化と精巣の発達を誘起することができたことから,MBHで局所的に合成されたT3が,MEの形態を変化させ,GnRHが分泌されることで,精巣の発達が起こることが明らかとなった.つまり,春から夏にかけてMBHにおいて起こるDIO2とDIO3のスイッチングによってMBHにおいて局所的に活性型の甲状腺ホルモン(T3)の濃度が上昇することが光周性制御の鍵であることが示された().

メラトニンは、脊椎動物に見られるホルモン。睡眠の調節に関与します。

以上,本研究においては,魚類におけるメラトニン合成の制御機構,メラトニン受容体による情報伝達機構,メラトニンの代謝系,ならびにメラトニン投与法などについて総合的に検討した。これらの結果は,魚類においてもメラトニンが,季節繁殖などの年周リズムや,遊泳活動,摂餌活動などの日周リズムの調節に重要な役割を果たしていることを強く示唆している。本研究で明らかになった結果は,魚類におけるメラトニンの生理作用をさらに詳しく解明するために重要な基礎的知見となるものと思われる。

グが決まり、季節繁殖の動物ではメラトニンにより性腺が萎縮します。一方、メラトニンは光に

図1■脊椎動物の光周性を制御する情報伝達経路の共通性と多様性

オレキシンはもともと動物実験から摂食活動に関係があるのではと考えられ ..

これまでに魚類に対するメラトニン投与は数多く行われてきたが,投与時のメラトニン動態については全く報告がない。そこで,腹腔内注射と経口投与によりメラトニンをキンギョに投与し,血中メラトニン濃度の経時変化を調べた。メラトニンを体重1kgあたり1mg腹腔内注射したところ,投与後直ちに血中メラトニン濃度は上昇し,1時間後に最大値(425.9±129.9ng/ml)を示した後,徐々に減少し,24時間後には投与前とほぼ同じ値に戻った。血中メラトニンの半減期は64.2分であった。また,メラトニン含有飼料を作成し,体重1kgあたり1mg経口投与したところ,投与1時間後に最大値(1607±599pg/ml)を示した後,徐々に減少し,6時間後には投与前とほぼ同じ値に戻った。これらの結果から,メラトニンは腹腔内注射のみならず経口的に投与することも可能であり,血中メラトニン濃度も上昇することが明らかにされた。今後,メラトニンの経口投与による魚類の生理機能制御技術が開発されることが期待される。

[PDF] 動物取扱業における 犬猫の飼養管理基準の解釈と運用指針(案)

魚類における血中メラトニンの代謝経路の一端について明らかにするために,メラトニンの代謝器官であると予測されるキンギョの肝膵臓を用いて外因性メラトニンの代謝をin vitroで調べた。その結果,メラトニンは酵素的に6-hydroxymelatoninに代謝されることが判明した。この代謝系は生体内のメラトニン量とその作用を調節する上で重要な役割を果たしていると推察される。

動物であり、年3回程度の出産が可能である。地域によるが、例えば東京で自然光だけで飼育すると

, が鍵遺伝子として発見された2003年当時,鳥類の研究ではゲノム情報の欠如が大きな障壁となっていた.しかし,2004年12月になると,ニワトリの野生原種と考えられている赤色野鶏のドラフトゲノムが解読されるとともに,約3万8千個の転写産物の発現量を一度に解析できるニワトリマイクロアレイが発売された.ウズラはニワトリと同じキジ目キジ科に属しており近縁なため,DNA塩基配列が高度に保存されている.そこでニワトリマイクロアレイを用いてウズラでゲノムワイドなトランスクリプトーム解析が行われ,遺伝子の発現を制御する遺伝子が探索された.短日条件にて飼育したウズラを長日条件に移行した際の時系列サンプルのマイクロアレイ解析によって,長日1日目の明期開始から14時間後に,下垂体の付け根にある下垂体隆起葉(pars tuberalis; PT)において甲状腺刺激ホルモン(thyroid stimulating hormone; TSH)βサブユニット遺伝子()の発現が誘導されることが明らかとなった(.TSHはαサブユニットとβサブユニットからなるヘテロ二量体のホルモンであるが,機能解析の結果,PTにおいて産生されたTSHがMBHに存在するTSH受容体を介して遺伝子の発現を制御することが明らかとなった.つまり,長日刺激によってPTで産生されたTSHがウズラの脳に春を知らせ,季節繁殖の開始の引き金となる「春告げホルモン」として働くことが明らかとなった().これまで甲状腺刺激ホルモンTSHはその名のとおり,甲状腺を刺激し,甲状腺ホルモンの合成,分泌を促進するホルモンであるというのが常識であった.しかしわれわれのウズラの光周性の研究から,TSHには「春告げホルモン」としての新しい機能があることが明らかとなった.また,長い間機能がわかっていなかったPTが,日長の情報を伝達する重要な中継地点であることも明らかとなった.

メラトニンは、松果体から分泌されるホルモンで、受容体MT1及びMT2 ..

メラトニンは明瞭な日周リズムを示すホルモンなので,受容体の側にも日周リズムが存在するのではないかと考え,キンギョ脳内メラトニン受容体の日周リズムとその調節機構について調べた。明暗条件下では,キンギョ脳内メラトニン受容体のBmaxは明期に高く,暗期に低い,血中メラトニン濃度と負の相関を持った日周リズムを示した。この結果から,メラトニン受容体のBmaxがメラトニンによりdown regulationを受けている可能性が示唆されたので,血中メラトニン濃度の日周リズムを消失させる松果体除去と恒明条件下での飼育を行い,その影響について検討した。その結果,松果体除去,恒明条件下での飼育のいずれによっても脳内メラトニン受容体の日周リズムは消失した。また,松果体除去と恒明条件下での飼育の効果は相加的ではなかった。これらの結果から,脳内メラトニン受容体の日周リズムは血中メラトニン濃度の日周リズムにより駆動されていると結論された。